桃雪 白夜の気まぐれブログ

我は厨二病女子、想像神Mなり!

アイデンティティプロテクション⑴

〜序章〜


「別れたいの」
彼女は切り出す
「嫌だよ」
彼は拒む
「私もう耐えられないの!」
彼女はぶつける
「ふざけんなよこのクズ!」
彼はあたる

そうして夜が明け、一組の男女が別々になった

許せない
許せない

俺は「現世」を許さない

彼女を直接守りたい

俺の事を愛してくれた、生みの親である「彼女」を…


〜第一話「アイデンティティの消失」〜


「学校行きたくないよぉ…」
オフトゥンの中でもがきながらスマホのアラームを止める
病気もちである彼女にとって平日は辛いのだ
「辛い」とひと言に言っても世間一般で言われるものとは訳が違う
大事な事だから何度も言うが、彼女は「病気もち」なのだ
幼い頃から周りから虐めを受けてきた結果である
この御時世、致し方ないだろうという考え方もあるのだが

重要な事を忘れていた
彼女の名前だ

彼女の名前は「和門花 真維」
読み方は「おとはな まい」
「和門花」なんて珍しい名前だと思うのが当然だ
余談だが和門花家は代々何かしら能力を持って産まれてくる
真維の能力は「波動を捕える」
オーラが見えるという能力だ
しかし極度に人見知りである彼女はその能力を使いこなせていない
そもそもその能力が開花したのは今の学校に入学する直前なのだ
本人も身内も勝手がわからず困っているのだ

重い体を引きずる様にオフトゥンから出て、支度を始める
適当にパーカー、ロンT、ジーンズを引っ張り出して着た
おしゃれは苦手傾向があるのだ
そして洗面台に向かい顔を洗い、髪をとかして歯を磨く
その後食卓に向かい、朝食を食べる
「お早う…」
「お早う」
家族と挨拶を交わし、憂鬱気分で食べていた
父と母が今日の予定について話している
父は今夜飲み会で遅くなるらしい

朝食を終え、自室に戻って荷物を持ち、学校へと向かう
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
駅まで徒歩十分、その後電車
移動は嫌いではないのだが、行く先が学校だと考えると気が重くなる
イヤフォンをかけ、ウォークマンで音楽を聴きながら登校する
やがて学校の最寄駅に着き、電車を降りて学校へ

「お早うございます、2年A組の和門花 真維です」
「お早うございます、真維さんね。今日は来れたね!頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
正面玄関の受け付けにて登校を報告し、図書室へ向かう
真維が通っているこの学校はとても特別な学校だ
「フリーカルチャー学園」
高校でも、大学でも、専門学校でもない、とにかく自分の好きな事を勉強する学校なのだ
授業は講師の先生が不定期に行い、普段は自分の好きな事について調べ物をしたり、制作活動やレポートを書いている
作品やレポートの提出の多さによって沢山の単位がつくのだ
授業では出席は取らず、登校したら受け付けで名前を名乗る
クラスでの集まりは週一回のホームルームのみ
自由な学校なのだ

いつもの様に図書室で調べ物をする
今日はハーブについて調べよう
真維は沢山の事を勉強している
心理学、パワーストーン、薬草、色彩、作詞、etc.
幼い頃に祖母に「貴女は素質があるから、もしかしたら魔女になれるでしょう」と言われた事がある
それを鵜呑みにしている訳ではないが、その様な事をしたいと考えていたのだ
苦しむ人を助けたい
その一心で勉強をしているのだ
本の内容をノートにまとめていると、恐れてた事態が起きた
わざわざ隅っこに隠れたのに無意味だったのだ
「おはよ!真維!」
「お早う…」
元彼の「木ノ下 大亮」だ
読み方は「きのした だいすけ」
見かけは強そうなのだが、これがまた甘えたがりなのだ
入学前のオリエンテーションの時に一緒の班になった際に、真維に一目惚れ、付き合う事になった
しかし真維の心に負荷がかかり過ぎてしまい堪忍袋の緒が切れた真維が別れを切り出したのだ
しかし大亮はそれを受け入れたのかどうだか
未だに真維にくっついて歩くのである
「今日ゴハン一緒に食べよ!」
「無理」
「なんで」
「私達もうそんな関係じゃないでしょ」
「えー!いいじゃん別に!」
「あんた馬鹿でしょ」
「うるせぇウ●コ!」
「ばっ…ここ公共の場だよ!?」
「関係ねぇよ!w」
「はぁ?」
その後も「行こう」「駄目」の押し問答が続いた
真維は声を抑えていたが、大亮の声が少し大きくなってしまった
「わかった!わかったから声のボリューム抑えて!」
「行ってくれるの!?やったぁ!」

普通の人ならば呆れるだろう
「なんでNOと言い切れないんだよ…」
現に周りにいた同級生は思っていたのだ
真維は薄々気付いてはいたが、あまりにしつこくされると話を終えるために自分が面倒を背負う性分だった
他人さえ良ければ自分はどうなってもいい、という考え方だった
それに、大亮が放つ孤独感を感じ取り、つい受け入れてしまうのだった

昼食を終え、イライラしながら廊下を歩いていると、正面から来た男の子に「大丈夫?」と声をかけられた
彼は「明口 優」
読み方は「あきぐち ひろ」
大人しく紳士的な彼は、密かな人気者だった
真維は優にこれまで何度も助けられている
故に大亮と別れる前から好意を持っていたのだ
実のところ優も真維に好意を持っていたのだが、真維はそれを知らない
所謂「鈍感」なのだ
優はそれをもどかしく思っていたが、自分に自信が持てないが為に、言い出せないのだ

真維はいつものように愚痴をこぼした
「またゴハン一緒に食べようって言われて…」
「断れないの?」
「それができたらやってるよ…しつこいんだもん…」
「まぁ、そうだよねぇ…」
最近は2人で行動する事が多くなり、話す機会も沢山あるので、2人で大亮の愚痴を言い合っていた
2人が一緒にいるところを見かけた大亮は、優に真維を取られたと、激しく嫉妬していたのである

この三角関係が、真維に起こった事件の原因だった…

ある夜、優が公園で月を写真におさめていると、買い物帰りの真維を見かけた
「あ、真維ちゃん」
「おぉ!今晩は、優君」
「今晩は」
真維は優のところへ近づき、2人で月の話をし始めた
しかし、そこへバイトを終えた大亮が通りかかってしまった
「あっるぇ〜?お二人さん、こんな所で会うなんて奇遇だねぇ」
「っ…!」
「おや、今晩は」
「2人で楽しそうですね!」
「僕と彼女は一緒にいちゃいけないかい?」
「俺が元々付き合ってたんだよ」
「でも今は別れたんでしょ?彼女が誰といようとそれは自由だろ?」
「ふざけんなよ!」
大亮と優が言い合いを始めた
真維はただただ恐怖心ですくんでいた
「お前みたいなクズに真維は渡さねぇ!」
「勘違いはよしてくれよ」
「黙れ!」
とうとう大亮は優に殴りかかってしまった
いつもは温和な優も流石に怒りをあらわにした
2人は殴り合いを始めてしまったのだ

真維は逃げたかったが、足がすくみ動けない
耳を塞ぎ、目を閉じた
涙を流しながら呟いた
「やだ…もうやだ…こんな世界見たくないよ…」

「誰か…助けて…」

真維の世界が暗転した

………………………………………………………………

『やっと助けを求めたか…大丈夫だ、後は任せろ』

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大亮と優はお互いへの怒りで我を忘れていた
そしてお互い同時に拳を振り上げた

一瞬力が抜けた真維はよろめいたが、すぐ立て直した
そして殴り合う2人の方に走り出した

2人の動きが止まった
腕を掴まれている

真維に…

「「…え?」」
2人が驚いた瞬間、真維は大亮の腕を引き背負い投げをした
「うわぁっ!」
「へっ!?」
そのまま間髪入れずに大亮の腹を蹴る
「うっ!」
大亮は腹を抱え苦しんだ
そして真維は優の腹を思い切り殴った
「がっ…」
そして優の足元を蹴りあげ、後ろに転ばせた
優は尻から地面に落ち、激痛に顔を歪ませた
そうして2人を見下ろした
2人が真維の顔を確認した時、その目から殺意を感じた
いや、殺意しか感じられなかった
「楽しいか?」
真維は蔑むように言う
「本当に真維が好きなら真維が苦しまない方をとろうとは思わないのか?自分の事ばかり考えて真維の気持ちを知ろうとしないのは何故だ。真維が争いを嫌うのを知らなかったとでも言うのか?」
2人は恐怖に身を震わせた
「真維…どうしたの…?」
「あんた…突然何を…」
「わからないか?真維は死んだ」
「「!?」」
「お前らが殺したんだ。今真維を呼んでも出てこねぇよ」
「え…?」
「じゃあ、あんたは…?」

「俺は真維じゃない。俺の名は…」

「『真生』だ」

「まお」と名乗り、冷酷な微笑みをうかべた、真維の姿をした彼

真維はいなくなったのだ

2人は混乱の為にぽかんとしていたが、やがて少し涙を流した


〜第一話完結〜
第二話→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2014/11/01/233917