桃雪 白夜の気まぐれブログ

我は厨二病女子、想像神Mなり!

男と女、黒と白、昼と夜(2)~黒昼過去物語~

学校に登校してきた白夜ちゃんは、まるでこの世の終わりを見たかのような、光の無い目をしていた。
何と声をかけたらいいかわからない。どのように慰めたらいいかわからない。
きっと、僕が何を言っても、偽善や建前だと思われるんだろうな…


「お前さ、-自主規制-」
友達にふられた話だけど、全く理解できない。
「何それ?」
「へ?お前…知らねぇの?」
「あ、うん。わからない」
「え…ちょ、それ、男としてどうなの?」
「いやぁ、そう言われてもねぇ…どういう意味?」
「つまり、-自主規制-」
「なっ…!」
「…?どうした?黒昼」
「やめて…僕にそういう話しないで…」
「大丈夫か?お前。顔赤いぞ?」
「なんだよ~男ならそういう話好きだろ~?」
「皆は好きかも知れないけど僕は駄目なんだ…」
「…それはそれで問題だな。男が変態じゃなかったらなんなんだ?っつー話だぜ?」
「わあぁ…決め付けないでぇ…」

ここ最近、友達のそういう…俗に言う「下ネタ」に赤面する毎日で。
皆が何処でそんな事を覚えるのか非常に謎ではあったけれど、それを知りたくもなかった。

そこでまた僕は心と身体の性別の食い違いに「障害」を感じる事になる。

それでも、完全に「女」になりたい、とは思わなかった。
言うまでも無いだろうけど、僕が恋している子は「女の子」だから。

僕が、あの子を、「守りたい」…


白夜ちゃんが学校に来るようになって、今度は先輩後輩に虐められるようになったらしいけど、時が経つにつれて、白夜ちゃんを虐める人間は、誰ひとり、いなくなった。


暫くして、突然白夜ちゃんが姿を消した。
学校には当然来ないし、両親も行方がわからないと言っていた。
学校中、いや、村中が心配する中、10日程経ったある日、突然、白夜ちゃんは学校に姿を現した。

「白夜!?どうしてたの!?」
「皆心配してたんだぞ!?」
口々に皆が問い詰めるが、白夜ちゃんはうつむき、
「何も、覚えていないの」
と、言うだけだった。

それでも、その目には、昔と同じような「光」が宿っていたのは、その場の全員がわかっていた。


冬の初め、もうすぐ雪が降るだろうという時。
家に帰ると、僕宛てに封筒が届いていた。
なんだろう?と首を傾げつつ、部屋でその封筒を開けて中身を確認した。

…!!
そんな馬鹿な…
僕は目を疑った。
幻?いや幻じゃない。
夢?いや夢じゃない。
僕が手に持っているその手紙には、何度確認しても、

「悪魔討伐隊入隊の案内」

と、確かに、書いてあった。

僕が…この僕が…
あの「悪魔討伐隊」にスカウトを受けるだなんて!

その日の夜、すぐに両親に報告した。
当然、両親は驚いたが、その顔は喜びの表情へと変わった。
「良かったねぇ!お母さん嬉しい!」
「ははは!俺は近所に胸を張って自慢できるな!」
僕は嬉しかった。
しかし、その後、お父さんは少し困ったような顔をして、
「じゃあ…俺の家系の伝統として、黒昼を独立させなきゃ、な」
…え?
「お父さん…僕、それ、初耳なんだけど…」
「あぁ…すまんな。黒昼が就職するのはもっと先の話だと思ってたからな…」
まぁ確かにそうだけど…
「俺の家系は代々、子供が就職する時は必ず独立させる決まりなんだ。男女問わず、な。それは俺も例外じゃない。お母さんもそれをよく理解してくれてな。それで結婚できた訳だがな。」
「そっか…じゃあ、新しい家を探さなきゃ、だね。」
「おぉ。本来なら俺達が探してやる予定だったが…黒昼、自分で好きな家を探せ。」
「え?」
「今までいろいろと決まりに縛ってお前を育てたからな…家くれぇ好きにさしてやる。」
「お父さん…」
「わからない事があったら私達に聞いていいからね」
「お母さん…」

そうだ。いつまでも両親を困らせる訳にはいかない。僕は自立して、自分の足で立って…
いつか、「恩返し」したいな。


家を探しても、いい家は見つからなかった。
キッチンが無いだとか、やたら高いだとか…
これならまぁいいかな、と、思っても、既に満室だったり。
僕は途方に暮れていた。
寒空の下、ホットドリンクを飲みながら、とぼとぼと街を歩く。
配属はこの地方だから、この辺一帯でないと駄目なのだが…

ふと、立ち止まった。
そういえば、目の前にある家は、あのモノクロ双子の家だ。
悩んだ訳ではない。考えた訳でもない。
その家の呼鈴を、僕は迷わず鳴らしていた。
「はぁい?」
出てきたのは、あの双子のように、髪の美しい女性だった。
「えっと…僕、黒昼です。」
「あぁ!白夜から話は聞いてるわ。学年総合成績トップですってね。」
「はぁ…どうも…」
「寒いでしょ?中入って。」
「あ、ありがとうございます。」
中に入ると、綺麗な造りの家だった。
「ココア飲む?」
「あ、いただきます。」
そして、出されたココアの入ったマグカップは、ピンクのハートの模様がついていた。
「ごめんなさいね。可愛いデザインの食器しかなくて…」
「いえ、大丈夫です。」
そして、向かい側に座った女性に、見たままの事を言ってしまった。
「白夜さんのお姉さんですか?」
すると、女性は少し驚いたあと、ふふっ、と笑って言った。
「いいえ、母です。」
「え!?わ…すみません!髪が凄く綺麗だったから…」
「あら、ありがとう♪毎日きちんとお手入れしてて良かった…白夜と極夜も綺麗な髪をしてたでしょう。私の母も綺麗な髪の持ち主なの。遺伝ね。」
「そうなんですか…」
「貴方…もしかして髪フェチかしら?」
「…フェチってなんですか?」
「まあっ。今時珍しい事を言う男の子ね…」
「あ…」
僕には何となく、白夜ちゃんのお母さんは演技をしているように見えた。
「ところで…」
僕は切り出した。
「白夜さんは…家はどちらに?」
すると、今まで笑っていた白夜ちゃんのお母さんは、悲しい表情に変わった。
「私もね、こっそり探したのよね…でも見つからなかった。あの子、強い結界を張っているみたいで…まるで心を閉ざしてるみたい。誰にも、わからないのよ…」

ココアを飲み終わり、お礼を言って、帰ろうとした僕を、白夜ちゃんのお母さんは呼び止め、言った。
「無理しなくても、いいんだからね?」
僕はその言葉の真意は理解できなかったけど、
「大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
と、笑った。

僕は決めた。

もう逃げない。
諦めない。
そして、妥協しない。


僕は必死に白夜ちゃんを探した。
探知魔法を使って、血眼になって、白夜ちゃんの家を探した。
心の中で、白夜ちゃんの名前を呼び続けた…

3日後…
もうすぐ日が暮れるという頃、今日はここで諦めようかなと思った瞬間だった。
森の中にいた僕の第六感に、白夜ちゃんの声が届いた気がした。
探知魔法を働かせると、すぐ近くに白夜ちゃんの気配を感じた。
僕は夢中でその方向へ走った。

こんなところ…何度も通ったはずなのに…
確かにそこには、小さくも可愛らしい家が建っていた。

呼吸を整え、覚悟を決めて、僕は、ドアをノックした。
コンコンコンコン
すると、そっとドアが開いた。
白い美しい髪の少女は、とても驚いているようだった。
「や、やぁ。」
「よく、ここを見付けたね。」
「うん。3日かかったけどね。」
「ちょっと待っててくれる?」
そう言って白夜ちゃんは一旦中に戻り、また戻ってきた。
「中、入って。」
「お邪魔します。」
中はやっぱり白夜ちゃんの実家のような内装だった。
勧められた椅子に座り、巻いていたマフラーを外そうとしたら、白夜ちゃんが先に僕のマフラーを外した。
驚き、同様する僕を尻目に、てきぱきと紅茶の用意をして、持ってきてくれた。
「こんなのしか用意できなくてゴメンね…」
「大丈夫だよ、気にしないで。」
「でも、どうしてここへ?」
「それ、なんだけど…」
僕は家の事情を説明して、家が見付からない事を伝えた後、勇気を振り絞り、言った。
「僕を、この家に、同居させてくれませんか?」

「いいよー」

「へっ?」
「黒昼君、頭いいし、強いし、頼りになりそうだから、心強いな」
「いいの…?」
「うん!いいよ!」
「ありがとう!!」
僕はとにかく嬉しかった。

「じゃあ…一緒に暮らすなら、教えておかないと…」
「ん?何?」
「詳しくは聞かない。約束してくれる?」
「内容によるけど…わかった。」
すると白夜ちゃんは、家の二階に行った。なんだろうと首を傾げていると…
「黙っててゴメン。」
そう言って白夜ちゃんが二階から連れてきたのは…
「…!?きょ…極夜ちゃん…?」
「久しぶりだな…」
「悪魔の呪いで死んだって…」
「別に死んだ訳じゃねぇんだ。まぁ、それ以上は、聞かないでくれ。」
「雰囲気、変わったね…」
「まぁ、な」

「ねーねー、うちは?」
「お、ど、どちら様…?」
「あ、うん。訳あって、この子も、ここに同居してるんだ。」
「うち、明夜!宜しくな!」
「あぁ、うん。宜しく、明夜ちゃん。僕は黒昼。」
「くろひる?」
「うん。仲良くしようね。」
「うん!」

「ここに同居するからには、何かしらやってもらうぜ…?」
「何かしらって?家事ならできるけども。」
「「「え!?」」」
「黒昼君…意外…」
「やるじゃねぇかよ…」
「かっこええ…」
「なら、家事を任せちまっていいか?」
「うん!任せといてよ!」

その日は僕は一旦家に帰って、両親にすむ家が見付かった事を報告した。
次の日から、引っ越しの準備をして、そして白夜ちゃんの家に転送の魔方陣を使って荷物を運び込んだ。

悪魔討伐隊に入隊の申込書を出し、中学校の卒業式の後…
両親のところへ近より、僕は言った。
「今まで、ありがとうございました。」
「おう、元気でな。」
「しっかりやるのよ。」
「僕、好きな人ができました。だから…『私』は『僕』として生きていきます。でも、フラれちゃったら、一旦、戻ってきてもいいですか?」
「「勿論」」
「幸せになれよ!」
「信じてるからね!」

「ありがとう!」

「あ!黒昼!」
「?」
「お前の子供には、俺の家系の伝統の事、どうするかは任せるよ!」
「え?」
「お前には無理強いはしない。子供、大切にしろよ!」
「はい!」


男と女、黒と白、昼と夜…
対になっている存在だけど、表裏一体でもあるんだ。
僕等は、それらを守りたい。

そして僕は、白夜ちゃんを、守りたい。

いつかお互い年をとって、「実は…」なんて告白、なんかしない。
僕は生涯、黙ってるんだ。
彼女を守るために…

本当の『私』も、そう決意したんだよ…


白夜ちゃん、「愛してる」…



~完結~