桃雪 白夜の気まぐれブログ

我は厨二病女子、想像神Mなり!

明るく夜を照らす~明夜過去物語~

いつの話だったかな…地球人がその星を見付けたのは。さっきまで何も無かったはずの空間に突如現れたその星を観測した地球人は、当然だけど驚きを隠せなかった。その星を詳しく調べてみると、空気も水も物質もある、人間が住める状態だったらしい。生物がいるかどうか、実際にその星に行ってみたら、普通に人間達が暮らしていたそうだ。他にも、見た事の無い動植物があったらしい。地球人が何より驚いたのは、その星の人間達は、「魔術」を使っているという事だった。地球とその星は交遊関係を結び、お互いの文化等を教え合ったり、お互いの星を訪れたりしたんだ。その星は、まるで子供達の夢を育む「楽園」であるかのようだったので、地球人が「パラダイス星」と名付けたんだってさ。その星の人間達は、心底喜んだそうだよ…




白い髪の女の子「白夜」と黒い髪の女の子「極夜」の双子の姉妹。何故だか彼女達の暮らす環境が彼女達を不幸にした。そして、世間的には、「極夜は悪魔に呪い殺されてしまった」という事になっていた。双子が知らず知らずのうちに悪魔と契約を結んでしまった事を隠蔽するために流された「嘘」であった。

離ればなれになった双子だったが、2年後の秋に、とある施設にて再開を果たした。
その施設は、パラダイス星の「魔術」と、地球の「科学」を融合した研究、実験を行っている、政府でさえ知らない施設なのだ。

再開を果たした双子は、暫くは家には帰れないため、折角だからと、「科学」を見せてもらったのだ。魔力を使わずに不思議な事を行ってしまうその技術に、双子は興奮を隠せなかった。
「極夜!科学って凄いねぇ!」
「お、おぉ!凄いな!」

双子がその施設の中の部屋で、最後の部屋に入ると、不思議なものを見た。
双子は散々双子にとって「不思議」と感じるものを見てきたが、ここにあったものは地球人にとっても「不思議」であったため、この表現を使わせてもらう。

その部屋にあったのは、水槽の中の液体に浸かり、管に繋がれた「女の子」だった。

「すいません…これは…?」
白夜が恐る恐る聞くと、
「あっ、ちょうどいいところに来たわね。近くで見せてあげるわ。」
そこにいた女性研究員が双子の背中を押しながら水槽へと歩み寄った。
周りの研究員達は何やら聞き慣れない言葉を話していたため、双子には理解できなかった。
水槽の中の液体が無くなり、水槽の中の椅子のようなものの上に女の子の身体が乗った。

その女の子は、静かに、目を開けた。

「挨拶してあげてくれる?」
女性研究員にそっと促された白夜は、
「は…初めまして」
と、恐る恐る挨拶をした。すると、その女の子は、
「は じ め ま し て」
と、たどたどしい挨拶を返した。
「私、白夜っていうの」
「は く よ?」
「俺は極夜だ。言えるか?」
「きょ く よ?」
「宜しくね!」
「宜しく」
「…よ ろ し く、お ね が い、し ま す」
「極夜極夜!この子ちゃんと返してくれたね!」
「そうだな…!」
後ろの女性研究員から「第一段階クリア、ね…」と、呟くのが聞こえた。

水槽の外に出してもらえたその女の子は、綺麗な灰色の髪を持つ女の子だった。双子に丁寧に服を着せてもらい、微かな笑みを浮かべていた。まだ上手く笑えないようだ。
「じゃあ、これから知能テストをしましょう」
そう言って、研究員達は明夜を椅子に座らせ、机を持ってきて様々な知能テストを行った。
「あれって、私達が毎年春にやるやつ…だよね?」
「あぁ、そうだ。あの女の子の知能を調べて大体の年齢を調べる…という事か…?」
「うーん…なんだろうね…?」

知能テストを終えた女の子は、疲れているようだった。目覚めてすぐに頭を使わされたのだから、当然だろう。
研究員達はまた双子に親しみの無い言葉を使って話していた。
女性研究員が、
「この子をとりあえず仮眠室へ連れて行きたいんだけど、一緒にきてくれるかしら?」
と、双子に尋ねた。
「あ、いいですよ」
「大丈夫ですー」
双子は即返事をした。そして、女の子に話し掛けた。
「ここじゃ休めないからさ、一緒にベッドのあるお部屋行こ?」
「うん」
返事をした女の子は立ち上がり、双子の手を握った。
「まるで本当の妹みたいね♪」
と、女性研究員にからかわれたが、女の子は知らん顔だった。
「じゃあ、行こうか」
極夜の言葉で歩き出し、部屋に行こうとした時だった。
「な ま え」
「「えっ?」」
「わ た し、な ま え、な い の?」
「あ…」
「えっと…」
突然の女の子の言葉に同様する双子だった。しかし、直後女性研究員が、
「じゃあ、二人にこの子の名付け親になってもらおうかしら。愛着わくような可愛い名前付けてあげて頂戴?二人の、妹だと思ってさ」
と言ったのだ。
双子はまんざらでもない様子で、女の子の名前を考え始めた。
「妹…ねぇ…」
「私達の妹なら、やっぱり『夜』で終わる名前だよね…」
「まぁそうなるわな」
双子はお互いの顔と女の子の顔を見ながら考えた。すると、双子は同時に口を開いた。
「「『明夜』ってどうかな?」」
「あっ…」
「あ…」
双子は驚いたが、女の子が微笑みながら
「め い よ?」
と言った。
初対面であるにも関わらず、双子には女の子が喜んでいる事がわかったのだ。
女性研究員は、
「じゃあ、その子の名前は『明夜』ね」
と、微笑みながら言ったのだ。
こうして、女の子に『明夜』という名前が付けられた。


3日程研究施設で三人で過ごしていたが、すっかり打ち解けてしまった。
「明夜ちゃん、凄く明るくて元気になったよね」
「喋るのも感情表現も上手くなったしな」
「本当に妹みたい…」
「だが俺にはひとつ疑問がある」
「なぁに?」
「なんで明夜は関西弁で喋ってるんだ!?」
「あ、あぁ…誰もあんな喋り方する人、ここにいないもんねぇ…」

「白夜ぉ!極夜ぉ!」
「どうしたの?」
「ここなんか変な音する!」
「変な音?」
「あっ、すいません!僕がハンカチ落としました!」
「そうだったのか…」
「すぐ拾います!」
「気を付けてくださいねー」
「ハンカチがその中の機械に引っ掛かって異音がしてたんだな…」
「明夜ちゃん、よく気が付いたね…」
「え?だって聞こえたもん」
「本当、明夜って五感かなり鋭いよな…」
明夜は周りの研究員達や双子よりも五感が鋭く、いろいろな事に敏感だった。


暫くして、研究員のひとりに双子は呼び出された。
「話って何ですか?」
「明夜の事なんだけど…」
「明夜の?」
「実は、明夜の人格と知能の元になっているのは、君達なんだ」
「…はい?」
「君達の記憶を読み取り、それを元にしてあの子はできてる。あと、肉体をつくるにあたっても、君達の髪の毛から採取したDNAを使ってるんだ」
「だから皆さん『妹』だなんて言ってたんですね…」
「ですが、明夜の性格は俺達とはだいぶ違うようですが…」
「そこなんだよ…君達の性格を元につくったはずなんだが、どうやら君達のその人格ではなく、君達の『裏の人格』からできたようなんだ」
「「えっ?」」
「君達には生まれつき裏の人格があったみたいでね、その性格を足して割ったのが、明夜って訳」
「ちょっと待っておかしいでしょ!?だって、人格が複数できるのは、幼少期に精神的なダメージを大きく受けた人ですよね?生まれつき、だなんて、俺は聞いた事が無いんですが…」
「そこなんだよね…それも一応調べたんだが…」
「どうだったんですか…?」
「何もわからなかったんだ。原因が」
「そう、ですか…」
「でも何故俺達に裏の人格があると?」
「調べてわかったのがそれだった。君達の中にもうひとつの別の精神が確認されたんだよ」
「どういう事なの…?」
「俺にもわからん…」

「あともうひとつ、明日、君達はやっと帰れるようになったんだ」
「えっ、本当ですか!?」
「あぁ。悪かったね…10日ほどこんなところに閉じ込めてしまって」
「い、いえ、大丈夫ですよ」

「それ、本当なん?」

「明夜ちゃん!?いつからそこに!?」
「今や」
「どっから聞いていた!?」
「『君達はやっと帰れる』って聞こえたから…」
「…ゴメンね…私達、ここがおうちじゃないから…」
「ずっとここにいる訳にはいかねぇんだ…すまん…」
「嫌や!うちを独りにするんか!?」
「っ…!」
「白夜と極夜はうちのお姉ちゃんやろ?そういってたよ、周りのひとが。二人は妹を置き去りにして何処かへ行く程の冷たい心なん?」
「ち…違うよ…私達だってそんな事したくないよ…でも、人間にはやむを得ない事情ってものがあるのよ…」

「じゃあ…うちも連れてってくれへん?」

「「……」」

「いいよね?極夜」
「いいよな?白夜」

「「一緒に、帰ろうか」」


嬉し泣きをしながら双子に飛び付いた明夜。
優しく笑いかけ、頭を撫でる白夜と極夜。
三人のそれは、本当の姉妹のようだった…


次の日、三人は施設の外で、研究員達にお別れとお礼の言葉を繰り返した。
白夜は地面に魔方陣を書いた。
「これ、『転送の魔方陣』なんですけど、私の家に同じものがあって、これで直接帰れるんです。このチョークで書けば、一回使った魔方陣は消えますから、この場所を知られる危険性も増えませんから」
「そうなの?それはありがたいわ」
「本当に、お世話になりました」
「いえいえ」
「明夜、元気でね」
「うん!ありがとう!」

「では皆さん」
「「「さようなら!」」」

研究員達が見送る中、白夜が呪文を唱えた瞬間、魔方陣が光り、三人を白夜の家へと一瞬で運んだ。


こうして、白夜はひとりの妹を取り戻し、さらにもうひとりの妹をもらって、二度と孤独を味わう事は無くなった…


~黒昼過去物語に続く…~