桃雪 白夜の気まぐれブログ

我は厨二病女子、想像神Mなり!

絶望に咲く赤い花(3)~極夜過去物語~

…………

最初に沈黙を破ったのは白夜の泣き声だった
嫌だ嫌だとまるで幼い子供であるかのように駄々をこねている
いつも一緒に助け合っていた二人は、引き離さないでほしいだなんて、我が儘とも悲願ともとらえられる事を言っていた

しかし極夜は…
沈黙の間、今までの人生が走馬灯のように甦ってきた
そこにいたのは、白い目で見られる自分と家族…
幼い頃から、自分と一緒に出掛けた愛する両親と双子の姉は、事情を知らない村の外の人達には白い目で見られていたのだ
「あの白い髪の3人家族、黒い髪の子を連れているわね」「まぁ…黒い髪の子は家族と一緒じゃないのね」「この間もあの四人で出掛けていたのを見たよ」「まるで黒い髪の子を家族と引き離しているようだわ」「何だか、いろいろ通り越して可哀想ね…」「あの四人、血繋がってるらしいよ。正真正銘の四人家族なんだって」「えぇ!?」「じゃあきっと悪魔に呪われているのよ」「ますます可哀想…」
そんな会話が聞こえてくる事もしばしばあった
今でも家族で出掛ければやはり白い目で見られるのだ
ここまでの思考と、その後の決断は、一瞬のうちに成された
覚悟を決めて、極夜は口を開いた

極夜「なら、私が消えます。私が消えて、白夜を守ります」

驚いた白夜は床にへたりこんだまま側に立つ極夜を見上げる
白夜が何か言おうと口を開きかけたが、極夜はそれを遮った
極夜「言いたい事はわかってる。そんなのは嫌だ、二人ずっと一緒がいい、極夜はそうしたくないの?そう言いたいんでしょ?でも、もしここでこのまま悪魔の印をつけたまま生きていくと決めたとしたら?それは悪魔に自分達の魂までもを譲る行為だ。そんなの、二人とも死んだも同然でしょ?それならば、私には、白夜だけでも生き残ってほしいから…それに、白い目で見られる身内は…もう…見たく、ない」
白夜は反論をしようとするが、言葉が出てこなかった
否定できないからではない
極夜の優しさと強さを、自分の言葉で潰したくなかったからだ

それを読み取った女長老様は、白い服の人達に何かを言っていたが、白い服の人達が何人か部屋から出ていった後、双子に向かって口を開いた
女長老様「覚悟を決めたようだね。急いで儀式をするとしよう」
その言葉が終わるや否や、白い服の人達が部屋に何かを持って戻ってきた
女長老様「極夜。これを左手で握りなさい。そして自分のタイミングでいいから、魔力を込めて手を開きなさい。そこからできたものに白夜が触れれば儀式は終わる。後は残った白夜が印を消せば全て終わりじゃ」
手渡された茶色い小さな物体を、極夜は力を込めて握りしめる
床に突然現れた魔方陣の上に立ち、双子は何かを言おうとしていた
これで最後なのに、言う言葉が見付からない
でも伝えなきゃ…
そして双子が思い付いたのはたった3つの単語
白夜「極夜…今まで『ありがとう』…」
極夜「『ありがとう』…白夜、『愛してる』よ」
白夜「極夜…私も、『愛してる』」
そして極夜は握る左手を開いた
現れたのは…「赤い花」…
どんなに綺麗な花よりも、鮮やかで美しい赤をした花
その「赤」は、極夜の「優しさ」と「強さ」を象徴していた
白夜はその花に手を伸ばし、また涙を流した
白夜「極夜…」
極夜「白夜…」

「さ よ う な ら」

白夜の手が花に触れるや否や、まばゆい光が溢れだし、双子を包み込んだ
その瞬間、極夜は静かに目を閉じた
さらさらと消えていく極夜の頬に、白夜は一筋の涙を見た
その涙は別れの悲しみの涙ではない事は白夜には一瞬で理解できた
本当の意味までは、わからなかったけど…

光も魔方陣も消え、白夜は涙をこらえつつ、強い力で頬の悪魔の印を涙と一緒にぬぐいさってしまった

悪魔の印は、跡形も無く、消えていた


その後、白夜は魔術に関する勉学にいっそう勤しむようになった
一人きりで魔術を極めたい、と、両親の反対を押しきって、森の中に家を造り、強い結界をはり、学校に通いつつも独学で魔術の勉強をしていた
人間をこんな目に会わせる悪魔達を、この手で全て排除してやる…
そんな思いを抱いていたのだ

その後、白夜は度々意識が飛ぶようになった
それは決まって先輩後輩に虐めを受けている時だった
同級生で虐めをする人は、一人残らず悪魔の呪いにかかったから、虐めを行うのは先輩後輩達と変わったのだ
虐めを受けている最中、突然意識が飛び、再び意識が戻ると、傷だらけで、逃げていくか倒れているかしている先輩後輩達が目に映ったのだ
いつしか、白夜を虐める人間は、いなくなった


あの儀式から2年後
皆は中3の秋
進路を決めなくてはいけない大事な時期です

白夜はいつものように家の場所を知られないよう、人気のない道を通り登校していた
不意に、後ろから誰かに口を塞がれた
布のような物を当てられているようだった
抵抗し、声を出そうにも、恐怖とパニックから何もできず、一瞬のうちに眠らされてしまったのだ

目を覚ますと、そこは窓のない薄暗い、それでいて広い部屋だった
ハッと気が付くと、自分は床に座っている状態で、両手は上から垂れ下がる鎖と手錠で動かない状態になっていたのである
白夜「何、これ…」
?「済まないね…君をここへ連れてくるには、ああするしかなかったんだ…それで、君が途中で目を覚まして暴れてしまったら困るから、今のその状態さ。申し訳ない。でも悪意は無いんだ。本当だよ」
目の前には、白衣を着た男性が本当に申し訳なさそうな表情で立っていた
彼の話によると、ここはパラダイス星の魔術と、地球で発達している科学を融合した研究、実験を行っている施設らしい
そんなもの聞いた事が無いなと首を傾げる白夜に、ここは誰にも知られないようにしている施設だから、知らないのも当然だと付け加えた
研究員「話がトントン拍子に進んでるかも知れないけれどね、今から君に見せたいものがあるんだ。見せたい、という表現が正しいかわからないけどね」
そう言って、彼は部屋の奥にある丸い台のようなものを指差した
研究員「あそこを見ててごらん。君の、一番欲しいものがあそこに現れるから」
私が一番欲しいものとはなんだろうか…
不思議に思いつつも、指を差された方をじっと見つめる
すると、過去に見た地球で人気の「SF」と呼ばれるジャンルの映画で聞いたような機械の起動音が聞こえてきて、台の上で強い魔力の塊が渦を巻いていた(白夜には少なくともそう感じた)
だんだんと一点に集まる魔力の塊に、突如台の上にある機械から強い電気が放たれた
まばゆい光を放ち、誰も目を開けられない状態だった

光が落ち着き、一番最初に目を開いたのは白夜だった
台の上を見た
そこには…

白夜「極…夜…?」

顔は見えなかったが、そこにいた綺麗な黒い髪の少女は、確かに…

極夜

だった

思わず魔法で手錠を外し、駆け寄った
極夜はゆっくりと顔を上げ、目の前に立つ綺麗な白い髪の少女を見つめた
そしてそっと白夜を抱き締めて、言った

極夜「ただいま」

白夜は思わず泣き出した
自分では枯れたと思っていた涙は次々と溢れ、やっとの思いで言ったのだ

白夜「お帰りなさい」

そして、極夜は白夜を抱き締めたまま、当時のままの優しい口調で言った
極夜「もう独りにしないよ、絶対に」
そうして、静かに白夜から身体を離し、優しく微笑んだ
極夜「これからは、私が…」
言いかけたあと、極夜は強気な表情に顔を変え、声を低くして言った

極夜「いや、俺が、白夜をきちんと守ってやる」

白夜は心底驚いた
白夜「極夜?」
極夜は人差し指で白夜の口に触れながら続けた
極夜「何も聞くな。俺が誓った事なんだ。白夜は、俺に背中を預けてくれればそれでいいんだ」
白夜はまだ驚きは隠せなかったが、目を閉じ、微笑みながら
白夜「はい…」
と、返事をした
相手の考えを深く追及しようとするほど、もう白夜は子供ではなかったのだ


こうして、双子は再会を果たし、その後研究員達に何度も何度もお礼を言ったのだ

そして、一生お互いを大切にすると、密かな誓いを立てたのだった…


~明夜過去物語に続く…~