桃雪 白夜の気まぐれブログ

我は厨二病女子、想像神Mなり!

アイデンティティプロテクション⑹

〜最終話、「おかえりなさい」〜


一向に目を覚まさないクラスメイトに、不安が募る一方であった
由紀が夢の中で真維に会ってから、その話をみんなにした
みんなで頑張って、真維ちゃんに戻ってきてもらおうよ、と、呼び掛けた

それから、クラスで、夢で真維に会った、と、証言する人が続出した
みんな口を揃えて言う
「真維は泣いて怯えていた」と

そして、ついに夢で真維に会っていないのは太亮と優だけになった
しかし、そう時が経たないうちに、2人の夢に真維が現れた
2人で同じ夢を見たのだ
「真維!」
「真維ちゃん!」
「…」
「…ねぇ、真維…どうしたの?なんで睨んでるの?」
「…」
「真維ちゃん、どうして怯えていたの?」
「…」
「真維!どうしたの!?なんで黙ってるの!?ねぇ!なんか喋ってよ!!」
「真維ちゃん!言わなきゃわかんないよ!」

「てめーらどの面下げて真維にそんな口きいてんだよ!!」
突然怒鳴り声があがり、現れた人物が2人を殴った
それは明らかに少年の姿をしていたが、2人にはすぐにわかった
「「真生…?」」
そう、真の姿をした真生だった
「てめーら、真維にいろいろ聞く前にまず言う事があるだろうがよ!そんな事もわかんねぇのかよ!」
「…」
「…」
「何黙ってんだよ!わかんねぇのかってきいてんだよ!」
「…わかるわけねぇだろ…言う事なんてねぇよ!」
「はぁ!?てめぇの頭は飾り物なのか!?ちゃんと機能するって言うんなら考えろ!真維がこんなに苦しんでるのは何が原因かをな!」
「原因…?」
「真維が現実から逃げたのはなんでだ!?真維が怯えていたのはなんでだ!?真維がっ…真維が…」
真生は少し押し黙って、静かな声で続けた
「真維が眠りについた時、お前らが流した涙はなんだったんだ…」
「「…!」」
暫く沈黙が続いて、真生が口を開いた
「わかったんなら、言ってやれよ」
そして太亮と優は、表情を変えない真維の前に立ち同時に言った

「「ごめんなさい…」」

そして頭を下げて、泣いた

「わかってくれたら、それでいい」
初めて真維が口を開いた
2人はその場にへたりこみ、泣き続けた
真維の表情は微笑みに変わっていた
「私の方こそ、ごめんなさい。私のせいで、太亮君はおかしくなっちゃったんだよね?優君はイライラしちゃうんだよね?」
2人がそれは違うと言おうとしても、真維は続けた
「私、これ以上迷惑かけたくないから、もう現実には戻らない。だからお別れだよ」
「えっ…」
「そ、そんなのやだよ!」
「戻っても、人が目の前で争うところ、見たくないし、それは私が原因だもん。私、いなかったら、2人は喧嘩しなくて済むもんね」

「じゃあね」

そして真維は後ろを向いて歩いっていった
真生は2人を見た
いいのか?と目で言っていた
太亮と優は目を合わせ、頷いた

「真維!」
「真維ちゃん!」

2人に呼ばれて真維が振り返ると…

太亮と優は握手をしていた

「俺たち、もう喧嘩しないよ!約束する!」
「ちゃんと仲直りするよ!絶対に!」

「「だから戻ってきて!」」

真維はふにゃっとした笑顔を向けた
その瞬間2人を白い光が包み込み、2人はそれぞれの家で目を覚ましていた

「真維」
「真生…」
「また会えたな」
「うん」
「真維、お前の能力の真の力はな、『人の潜在意識を覗く』だ。ただオーラが見えるだけじゃない。潜在意識と会話して、その人の心を見るんだ」
「え…」
「お前なら使いこなせる。役に立てるさ」
「…!」
「あっちでやる事があるんじゃないのか?」
「…うん!」
「頑張れ。疲れたら俺のところに来い。いつでもここで待ってるぞ」
「うん!ありがとう!」

すると真生は後ろを向き歩き始めた
「待って真生!」
真維に引き止められ、真生は振り返った
すると真維は、言いにくそうに言った

「ねぇ、真生。貴方は何者なの?」

すると真生は少し間をおいて、優しい声で言った

「生まれる事ができなかった、お前の双子の兄ちゃんだよ」

「…双子の…お兄ちゃん…?」

「母さんは確かに俺とお前を身ごもった。だけど、俺だけ流産になっちまって、生まれてこれなかったんだ。」
「そんな事が…」
「父さんと母さんは余りにもショックで、お前に話せなかったんだろう」
「…」
「守ってやれなくてごめんな」
そして真生は真維に近づき、頭をぽんぽんした
真維は真生に抱きついた
「お兄ちゃん」
「真生でいいよ。双子なんだし」
「大好き」
「あ…」

そして2人を白い光が包み込んだ

「私、行くね」
「おう」

「またね」
「またな」

………………………………………

視界には白い天井
懐かしい体の感覚

「真維ちゃん」

声の方に顔を向けると、由紀と知葉がいた
2人は笑っていた
そして、由紀が徐にベッドの仕切りのカーテンを開けた

そこには、クラスメイトが全員集合して、笑っていた

「「真維ちゃん」」

「「「「「「おかえりなさい!」」」」」」


真維はまたふにゃっと笑いながら

「ただいま!」

と言って、嬉し泣きをした

クラスメイトは真維を囲み、真維も含めて全員で笑っていた


真生も、潜在意識の中で、笑いながら

「大好きだぜ」

と、呟いた


〜完結〜


第5話→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2014/12/20/213336

はてなのプロフィールの編集した

お早うございます

約2年ぶりにはてなのプロフィールの編集しました

あん時ゃまだ高校生だっただよおらぇは
時が経つのは早いもんだなぇ

_人人人人人人_
>突然のなまり<
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

おふざけはこの辺にして(笑)

ちゃんとしたブログの記事も書きたいなぁ
小説も続けたい!

段々とやっていけたらと思います
それでわ!

お疲れ様でした
(´°ω°)ノシ

アイデンティティプロテクション⑸

〜第五話、「無意識の出会い」〜


学校のホームルームの前
優と太亮は教室の中でぼうっとしていた

その時、教室に平田 知葉(ひらた ともは)が入ってきた
何かに怯えたような、驚いているような、そんな顔をしていた
「どうしたの?」
由紀が知葉に声をかけた
すると知葉は言いにくそうに口を開いた

「夢で真維ちゃんに会ったんだ…でも夢って感じじゃなかった…真維ちゃんが本当に話しかけてきた感覚で…」
「真維ちゃんが!?な、なんて言ってた?」
「わからない…肝心なところが聞こえなくて…でも…泣いてた…真維ちゃん凄く悲しそうだった…」
「…」

クラスじゅうがしんみりとした空気に包まれていた

優と太亮は真維の心配をした


………………………………………

その夜、由紀はいつものようにベッドに入り、いつものように眠りについた
しかし、いつもと様子の違う夢を見た

………………………………………

「…?ここは…何処?真っ暗で何もわかんないや…」
由紀は1人で暗闇の中にいた
宛もなく歩くと、誰かの泣き声が聞こえてきた
「誰?」
声の方へ歩くと、そこには真維がいた
「真維ちゃん!?」
由紀が声をあげると、真維が顔を上げた
「私を見付けてくれてありがとう」
真維が言った
「どうしたの?なんで泣いてるの?」
由紀が聞くと、真維は答えた
「私のせいで、みんなの日常が崩れちゃった…あの子の心を壊しちゃった…迷惑かけちゃった…ごめんなさい…」
「そんな事ないよ!真維ちゃんは何にも悪くないよ!」
「だって…あの子凄く苦しそうにしてるんだもん…」
「あの子って誰?誰の心を壊しちゃったの?」

「木ノ下 太亮 君」

「…え?」
「私、気が付かなかったんだけどね、あの子を私がふってから、あの子は自分を見失ってしまってたの。だから関係ない人にイライラを向けたり、私にしつこく話し掛けたりしてたんだ。壊れてしまったのよ」
「…そうだったんだ」
「だから私に責任があるの。私が壊しちゃったあの子の自我(アイデンティティ)を、なおしてあげなきゃ。そうしないと、あの子がもっと壊れる…」
「真維ちゃん…」
「だから私、意識の世界に逃げた。私がいない間、私の友達が私の代わりをしてくれたんだよね?」
「それって…真生君の事?」
「そうだよ。絶対に私を裏切らない、私の友達…」
「でも今、真生君は眠ってしまったよ」
「うん。現実世界に慣れてなかったから…だけど私、役目を果たすまでは、現実世界に出てこれない。現実世界に出てったら、あの子の心とお話できないの…」
「じゃあ、真維ちゃんは…ずっと眠ったままなの…?」
「そうなるね…」
「そっか…じゃあさ、私に何か手伝える事があったら言ってよ!協力するよ!」
「本当?ありがとう…じゃあ、お願いがあるの」
「なぁに?」
「あの子含めて全員が安心して学校に来れるようなクラスをつくってほしいの」
「わかった!みんなにも協力してもらうね!」
「ありがとう…本当にありがとう…」
「任せて!」

そして真維ははじめて笑った

………………………………………

由紀は目を覚ました
朝になっていたのだ
アラームを止め、さっきまで見ていた夢を思い出し、よし、と、気合いを入れた


〜第五話完結〜

最終話→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2015/03/07/005802

第四話→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2014/12/06/050518

アイデンティティプロテクション⑷

〜第四話「意識体は何処へ」〜

「…はっ」
「お早う真生君」
「お、おう…」
この頃、真生は居眠りが増えた
図書室で調べものをしている時でも、コンピューター室でレポートを書いている時でも
周りが心配して声をかけても「大丈夫、多分疲れてんだ」と、言うだけだった
しかし、日に日に居眠りの回数や時間が増えていく
流石に真生は辛そうだった


ある日、学校の廊下の曲がり角で、優と大亮がすれ違いざまにぶつかった
「あっ!ごめんよ!」
優は咄嗟に謝ったが、あろう事か大亮はその時イライラしていたのだ
「てめぇなんだよ」
「だからごめんって…」
「上等だよ殺すぞ」
「ちょ…わざとじゃないんだよ?」

「大亮やめとけ。優は謝ったじゃねぇかよ」
真生が通りかかり、声をかける
「てめぇは関係ねぇだろ。引っ込んでろウ●コ」
「ウ●コはてめぇだケツから出てこい」
「なんだよやんのか?」
「てめぇがやりてぇだけだろうがよ」
「っ!」
「てめぇの都合で事を起こすんじゃねぇよ。死ねクズが」
「ーっっ!」
大亮は真生の顔目掛けて拳を振り上げた
真生はそれを手で受け止めた
しかしその時にバランスを崩してしまった
大亮が反対の手を振り上げ、それが真生の額にぶつかった瞬間、真生の全身の力が抜け、その場に崩れた
「真生君!」
優が叫んだ瞬間、その声で大亮は我に返った
「お前なんて事を!」
「わ…わからない…なんで俺…こんな…」
「訳わかんねぇ事言うな!」
すると、騒ぎに気付いた学生が先生を呼んだ
その間、真生はピクリとも動かなかった
「真生君!」
「真生!」
「和門花!」
クラスのみんなも騒ぎに駆けつけ、学校の廊下は混乱に包まれた

…………………………………………

「真生君…」
「真生…」
あれから3日経ったが、真生は目を開けなかった
ずっと病院のベッドに横たわったまま動かない
寝息はたてているものの、まるで魂を失ったかのようだった
優と大亮は絶望していた
クラスのみんなも時々、真生の様子を見にきたが、かといって何かが起こる訳でもなかった

真生は、眠り続けていた



〜第四話完結〜

第五話→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2014/12/20/213336

第三話→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2014/11/10/200127

やっとこさ(笑)

お早うございます

夏休みにかき始めた小説をやっとこさあげました(笑)

とりあえず2つの悲しい恋の物語をあげました


これは私が今現実でおかれている状況をそのままオリキャラに反映させたものなので、全然違う世界観で同一人物がいらっしゃる(笑)

まぁ、読んでくださると嬉しいです

一応URL貼っ付けときます

恋と病熱→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2014/11/24/160838

カーマシティ→http://momo-yuki-haku-yo-ancmot-15.hatenablog.com/entry/2014/11/24/160922


よかったらで構いません
感想下さい

でわでわ
お疲れ様でした
(・∀・)ノシ

カーマシティ

その街の住人は、愛を持たぬものであった
外の世界の人間達を、あらゆる人外生物から守るため、戦う事が生き甲斐なのだ
そんな中、希に愛を知る子供が産まれる事がある
しかし、その子は、周りからは蔑まれ、避けられるような存在なのだ

戦う事が生き甲斐だから、そこに愛など必要無いのだ


〜カーマシティ〜


この街で育った少年トリスタン・ヒュアードは、幼少よりこの街の住人の心理に疑問を抱いていた
戦う事だけしか脳がない住人達に
そしてもうひとつ疑問があった
昔から、周りに除け者扱いされている少女の存在だった
大人達は、「あの子は悪魔の申し子なんだ」だとか、「あの子はこの世にいらない存在なんだ」とか、そう子供達に聞かせていた
周りの子供達も、少女を見かける度に石やゴミを投げ付けたり、罵声を浴びせたりしていた
トリスタン自身は、そんな事は間違っていると思っていたものの、少女を助けたりすれば、たちまち大人達に捕まり、地下牢に閉じ込められるとか、街から永久追放されるとか、酷い仕打ちを受けるのだという事を知っていた
その為、自分はあの子に興味が無いふりをしていたのだ


ある日、トリスタンは思い切って、純粋な疑問として、母親に投げかけた
「母さん。あの子は悪魔の申し子だなんて言うけど、その理由を詳しくは教えてくれないの?」
すると、トリスタンの母親は、無表情で答えた
「マーシャ・ホロシロフはね、愛を知る子供なの。だけど、私達に愛なんて必要無いでしょう?そんな面倒なものを持ち込まれたら、この街の力が働かなくなるの。だから、ああいう子は、もうすぐ街から出て行ってもらわなくてはならないのよ」
「いつ追い出すの」
「あの子の二十歳の誕生日によ」
「あそう…」
理由はわかったが、トリスタンには、愛が理解できなかった
愛とは、一体なんなのか…

ひとりで散歩に出掛けた時、偶然マーシャを見付けてしまった
彼女は、いつものように、そのブロンドの髪を小さく結って、退屈そうな顔で笑っていた
そして、道端の花に水をかけていた
花に水なんかかける必要性があるのだろうか、と、トリスタンは首をかしげた
誰もいない事を確認して、思い切って、聞いてみたのだ
「花に水かけて何してんだ?」
すると、マーシャは心底驚いたような顔をしたけれど、すぐにいつもの表情になり、答えた
「お花にとっては水がゴハンだから。ここの土は養分を沢山含むいい土だけれど、乾燥しがちなの。だから、毎日水をあげてるの」
「そんな事してなんになるんだ?」
「お花が喜ぶ」
「花に感情なんかあるか」
「私にはわかるの、お花の気持ちが」
「…」
トリスタンには、それが彼女の持ち合わせている『愛』なのか、と考えていた
けれど、よくわからなかった


マーシャは今日は街灯の上に座って歌を歌っていた
いつも歌っているのは戦わない歌
そんなマーシャを戦うやつらは笑っていた
街灯の上で彼女のスカートを風が撫でていく
彼女のお気に入りの場所のようだった
「またあいつ歌を歌ってるぜ」
「ほっとけ。あれは只の馬鹿だよ。『愛している』だなんて言っちゃってさ」
そう言って街の子供達はスルーしていく
彼女は諦めるように歌っている
トリスタンは一瞬だけ顔を見た

「そっか。あいつ、諦めるように泣いてんだ」

マーシャの頬に涙が光っていた


いつしかトリスタンにはマーシャが可哀想に思えてきた
思い出せなくなってしまう前に「遊びに行こうぜ」って言ってやろう
そう考えていた

ある朝、街が大騒ぎをしていて、トリスタンは目が覚めた
「父さん母さん、何事なの!」
「消えたんだ…」
「消えた?」

「マーシャ・ホロシロフが失踪したのよ…」

トリスタンは一瞬止まった
そして家を飛び出した

街中探しても何処にも居ない
消えちゃった…
「遊びに行こうぜ」ってついには言えないまんま、あの子は消えていったんだ…

…あれ?なんで俺はあんなやつを探しているんだ?

唐突に疑問が頭をよぎる
そして、トリスタンは涙を流した

この感情は生まれ持っていたんだ
俺にもあった感情なんだ

これが『愛』なんだ

今更気付いた頃には、彼女は何処にも居ない

街の端まで来た時、封筒を見付けた
『私に話し掛けてくれた帽子の男の子へ』
そう書かれていた
迷わず封を開け、中の紙の文字を読む

「初めて私に話し掛けてくれたのが嬉しかったです。私は街の外で人間として暮らします。ありがとう。」

トリスタンは、声をあげて泣いた

そして、小さく、「大好き」と呟いた



ここは一瞬を繋いで作った
過去と未来の、僅かな隙間
カーマシティ
君はほら街を外れて、消えていく


ーThe endー



原曲:米津玄師「KARMA CITY」

恋と病熱

何もかも嫌いになりたくなかった
だから何もかも嫌いでいた

ものでも、ことでも、ひとでも

嫌いたくなかった

だからひたすら嫌いでいた

なのに…


〜恋と病熱〜


生まれつき不治の病に侵されていた少年、オク・ダヨンは、幼少より暗い顔をしていた
そんな彼が唯一笑うのは、幼馴染みのマーシャと遊んでいる時だった
マーシャはいつもダヨンの体調を気にかけ、「疲れた?」とか、「お腹すいた?」とか、優しく声掛けをしていた
毎日ダヨンの家へ行き、母親や自分が作ったお菓子や、庭の花を持っていき、床に入りっぱなしのダヨンを元気付けたり、外へ連れ出して一緒に遊んだりしていた

ダヨンにとって、数少ない至福の時間だった

時が経ち、ふたりは学校へ通うような歳になった
体調は割と優れてきたダヨンも、例外無く学校へ通った
クラスメイトと同じような遊びはできなかったものの、みんなダヨンに良くしてくれた
ダヨンは幸せだった

しかし、人間は嫌でも成長をするもの
ダヨンも、肉体も精神も大人に近付きつつあった

ダヨンにとって「好き」な事が少なくなり、「嫌い」な事が沢山増えた
教室の窓から、外を歩き回るみんなの背中を見ていた
「みんなはいいよな」
そんな事を呟いていた
本当はみんなに言いたいことだったが言えなかった
言いたくても言えない事が増えた
空は濁り、夜になろうとするばかりである

マーシャが女友達と話をしながら教室に入ってきたのがみえた
話の内容はぼうっと聞いているだけだったが、「何処にも行けない私をどうする?」というマーシャの言葉だけが明確に聞こえた

マーシャはお家にいいなずけを決められそうなのだ

昔からやんちゃばかりしていたが、実は彼女はお嬢様なのだ
それでも自分に優しくしてくれていた事が、ダヨンにとってこの上ない幸福だったのだ

自分も家に帰ろう
そう思い立ち上がった
途端に視界が暗転した
「…ン…ダヨン!大丈夫!?」
マーシャの声で気を取り戻した
眩暈を起こして倒れたのだった
「あ…マーシャ、ありがと…」
「大丈夫?今日は一緒に帰ろうか」
「うん」
こんなに優しい女の子にいいなずけができるなんて…
そんな現実から逃げるように白昼夢に全て押し込んだ
現実が空っぽになるまで、空想に詰め込んだ

帰り道、学校の授業について話をしていた
「じゃあ、goの過去形は?」
「え、えっと…」
「もー!今日やったとこだよー!」
「俺英語嫌いなんだよー…」
「『嫌い』って言わない、『苦手』って言いなさい」
「ふえぇ…」
ダヨンは勉強が苦手だった
それでも覚えたことは沢山増えた
「そういえばさ、あそこに枝のいっぱいある木が見えるでしょ?」
不意にマーシャが切り出す
「うん」
「あんた昔あれに登ろうとして、枝が折れて落っこちたよね(笑)」
「はぇ!?そんな事あったっけ!?」
「何よぉ、忘れちゃったの?」
「覚えてねぇよ…」
「もー…」
忘れたことも、沢山増えたのだ

バス停にバスが来て、2人はいつものように乗り込む
ダヨンがあまり歩けないので、近いけれど、バスを使ってるのだ
バスに揺られながらダヨンは夕日を見ていた
すると、マーシャがケータイのカメラで写真を撮った
「何撮ってんの?」
「今日の夕日が綺麗だから…」
「あぁ!俺も夕日見てたの」
「あ、やっぱり?綺麗だよね…」
「うん…」
そうこうしているうちに降りる場所まで着いた
「おいお二人さん、ここで降りるんだろ?」
いつものバスの運転手さんが2人に呼びかける
「へっ?わ!すみません!ありがとうございます!」
「あぁ!マーシャ待って!」
慌てて降りていく2人に、運転手さんは笑顔で手を振った

バスが去っていった途端、マーシャがクスクスと笑い出した
「何どうしたの?」
「いや、私達、似てるよねって。フフっ」
「あはは、そうだね!」
ダヨンは嬉しかった
すると、マーシャは笑いながら、ダヨンにこう聞いた
「ねぇ。ダヨンって、好きな人できた?」
ダヨンは戸惑った
「い、いや、まだだよ」
「あはは、そっか。私もまだなの」
ダヨンは嘘を付いてしまったのだ

ダヨンは、マーシャが好きだったのだ
故に、悲しかったのだ

ふいにダヨンの服のボタンが千切れた
すかさずマーシャがそれを拾い、言った
「付けてあげるからおうちあがらせて」
「えっ、あ、ありがとう!」
「いいえー」
マーシャはいつものように笑う
それでダヨンはさっきの悲しみを押し殺し、マーシャと一緒に家に入った


部屋でマーシャにボタンを付けてもらっている間に、ダヨンは切り出した
「将来のお婿さん、決まった?」
「まだよ。お父さん達も酷いよ?決めるならさっさと決めてほしいのに」
「あはは、そうだね」
「あ〜あ、私が普通のおうちに生まれてたらなぁ…」
「そう言うなよー…」
ダヨンは思い切った
「俺、さ。マーシャがいないと駄目みたい」
「んー?そうなの?」
「うん…」
「なんで?」

「マーシャがいないと、色んなことが、色んな風に、嫌いになっちゃうよ」

マーシャは驚いた顔を向けた
そして静かに微笑んだ
「…そっか。そう思ってくれて嬉しいな」
そして、いつの間にかボタンを付け終わった服を差し出した
「ほいっ」
「おっありが…」
言いかけて、ダヨンはむせた
「大丈夫?」
マーシャが背中をさすると、ダヨンは血を吐いた
「!?ダヨン!しっかり!今お母さん呼んでくる!」
マーシャは慌てて部屋の外へ出て行った
ダヨンの視界が暗転した


ダヨンが目覚めると病院だった
呼吸がしんどく、体を動かすのも辛い
しかし、自分の横には手を握ってくれていたマーシャが居た
彼女は泣いていた
「ダヨン…起きた?」
「まー…しゃ…」
ダヨンは安心と喜びから笑顔になった
「良かった…」
マーシャも微笑んだ

それから毎日マーシャはダヨンのところへ来た
そして遅くまで一緒にいてくれた
ダヨンが夜眠るまで
「マーシャ…辛くない…?」
「大丈夫よ。へーきへーき」
マーシャは笑っていたが、少し痩せたのがダヨンにはわかった
しかし、ダヨンの方が日に日に弱っていくのが自分でもわかっていた

マーシャは今日もダヨンが眠ったのを確認して、病室を出た
すると、お医者様と廊下ですれ違った
「今晩は」
「今晩はマーシャさん。いつもありがとう」
「いえいえ。あの…ダヨン君は、元気になりますか?」
マーシャはお医者様に訪ねた
しかし、お医者様は無言で悲しい顔をした
マーシャはそれを見て察した
「もうすぐ、お別れって事ですか?」
「そうなるね…お別れはダヨン君の側にいてあげてくれ」
「勿論ですよ」
「ありがとう。さぁ、今日ももう遅いから帰りなさい」
「はい…」
マーシャはうつむきながら家へ帰っていった

マーシャがいつものようにダヨンの病室へ入ると、お医者様とダヨンの両親が居た
「まさか…」
マーシャはダヨンのベッドに駆け込んだ
「ダヨン!ダヨン!」
すると、虚ろな目をマーシャに向け、ダヨンがこの時を待っていたとばかりに口を開いた
「まーしゃ…ぼくの…こと…やさしく…して…くれて…うれしかった…」
「当たり前じゃない…幼なじみだもん…」
マーシャは思わず涙を流した
「ぼく…きょうまで…まーしゃと…いれて…しあわせだったよ…まーしゃ…ありがとう…」
「ダヨン…私ね…実はダヨンの事…」

「大好きだったの」

ダヨンは静かに涙を流した

「まーしゃ…」

そして、最後に小さく、「大好き」と言った



病熱を孕ませ夢を見ていた
盲いた目にみえた落ちていく陽
愛していたいこと、愛されたいこと
望んで生きることを、許してほしい


ーThe endー



原曲:米津玄師「恋と病熱」